マンモグラフィと被曝について
当院にいらっしゃる方の中にはマンモグラフィの被曝についてご心配される方がいらっしゃいます。放射線の検査ですのでごもっともだと思います。
それでも検査がすすめられるのはメリットの方が大きいためですが、よくわからないままでは不安も消えません。
本日は放射線による健康への影響について解説します。
放射線による健康影響は、【確率的影響】と【確定的影響】に大別されます。
【確率的影響】というのは放射線量が増えると発生する確率が大きくなる影響であり、一定量を超えると放射線量が少ないと実質的に安全とされるものです。
一方、放射線被ばく量が非常に高い場合には、【確定的影響】と呼ばれる被ばくによる急性症状や障害が起こる可能性があります。例えば、1シーベルト(被曝の指標:sv(シーベルト)という単位)以上の被ばくによって、急性放射線症候群や白血病などの発症リスクが上がることが知られています。
〇確率的影響…放射線を被曝したことにより、がんや遺伝子異常などが発生する確率が上昇することを指します。これは被曝量が少ないと非常に確率も非常に低く実質的には安全とされています。逆に被爆量が増えると、その確率も高くなる傾向があります。おおまかにいうと100mSv(ミリシーベルト:実効線量)の被ばくを受けると発がんリスクが0.5%上昇すると考えられています。
放射線被曝量 がん発生リスクの例
0.1 mSv未満 ほとんどなし
0.1 – 1 mSv 非常に低い
1 – 10 mSv 少し高い
10 – 100 mSv 中程度
100 mSv以上 非常に高い
〇確定的影響…放射線を被曝することによって、健康影響が確定的に発生することを指します。
放射線被曝量 確定的影響の例
0 – 10 mSv 健康影響なし
10 – 100 mSv 遺伝子損傷、白血病・がん発症のリスク増加
100 – 1,000 mSv 吐き気、嘔吐、下痢、発疹、髄液脱水症などの急性症状
1,000 – 10,000 mSv 急性放射線障害(消化管障害、脱毛、白血球減少、骨髄障害)
10,000 mSv以上 死亡
【検診での被曝量】
胸部レントゲン:0.05mSV
マンモグラフィ:0.05mSV
頭部CT:0.5~1.5mSV
胃バリウム検査:2.0mSV
胸部CT:7.0mSV
PET-CT:8~10mSV
(参考)自然放射線被曝量 1年間に浴びる自然放射線量:平均で約2.4mSv
(参考)飛行機での被曝量 国際線1回のフライトあたり数マイクロシーベルト(μSv)から数ミリシーベルト(mSv)程度
意外ですが日常生活でも自然からの放射線の被曝があります。自然放射線は、地球や太陽系の中で自然に存在する放射性物質から発生する放射線で地域や環境によって異なりますが目安として1年間2.4mSV程度被曝しているとされています。
飛行機にのるときも宇宙線からの自然放射線被ばくがあり、高度によって異なりますが、国際線による1回のフライトで浴びる被ばく量は1回あたり数マイクロシーベルト(μSv)から数ミリシーベルト(mSv)程度とされています。また、国内線の場合には、高度が低いため被ばく量は低い傾向にあります
以上のことより
一般の検診レベルでの被曝量は【確定的影響】が起こらない程度の放射線の量ですがオプションにあるPETやCTでは被曝量が比較的多くリスクや不安のない方にルーチンではおすすめできません。
【確率的影響】を考えたときも胸部レントゲンやマンモグラフィは実質的に安全とされる領域にあり、1年間に浴びる自然放射線量と比較してもはるかに少ない量です。
検診で被曝のデメリットよりも早期発見メリットのほうがはるかに大きいといえます。
一般的なマンモグラフィの被爆量は、1回の撮影で約0.05msvであり、一般の人が1年間に受ける自然放射線量の50分の1程度です。上記の確率的影響も最小限で確定的影響もないと言えます。また照射も乳房に限定され健康への影響は非常に低いと考えられています。当院では3Dマンモグラフィが導入されていますが同様に低い被曝量での検査となります。
このように微量の被曝のデメリットよりもがんを発見するメリットの方が高いため検診として推奨されています。しかしながら微量とはいえ頻繁に行うと蓄積されていくため頻度については検診では1-2年に1度、所見がある場合や術後は医師に相談して頻度が決められます。
また、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には、胎児への被爆による確率的影響のリスクを考慮して、マンモグラフィの受診を避けることが推奨されています。
以上のようにマンモグラフィは、乳がん検診において広く使われている検査方法で 被曝量は極めて小さく、乳がんの早期発見による効果が大きいことから、利益とリスクを比較して受診を判断することが重要です。
また、どうしてもマンモグラフィは避けたい場合は超音波検査やMRIなどの検査もありますので医師にご相談いただければと思います。(MRI検査は院内では実施できませんので他施設への紹介となります。)
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